フジくん
フジくんは北国の出身です
半端な時期にひとりで入部してきた彼は、黒づくめの服装に目元の泣きぼくろ、端正な顔だちが印象的で
すぐに女子部員の注目の的になりました
もちろんわたしも例に漏れず
ひそかに視線を送っていたものでした
合宿で甚平を着てきたフジくん
理由を聞くとただ暑かったからだと言いました
そんな 流されないところも好きでした
フジくんは実はオカルトマニアで
飲み会ではカルト宗教や心霊スポットの話を嬉々として語り続けていました
そんな空気の読めないところも好きでした
フジくんがわたしのことを気に入っていると教えてくれたのは 仲のいい後輩でした
だけどそれを知ったわたしが積極的になればなるほど
フジくんは身構えてしまったのでした
フジくん、あなたはいまも 今昔物語を読んでいますか
調味料は醤油一本ですか
わたしのこと たまに思いだしたり していますか