恋はいつも幻のように/ホフディラン
野ばら君とやっと会って話ができたのは4月中旬だった。
向こうは復縁を切り出されるのではないかと疑っているらしく、予定を聞いてもはぐらかしたり、先約が入っていると断られたりしていたけど、「次に進むために会いたい」と言ったらすんなりOKしてくれた。
待ち合わせは、2回目のデートで行ったカフェ。
気合いを入れて30分前に着いた。
何回もトイレに行って髪や化粧を直した。
待ってる間は、平常心なふりをして雑誌を読んだ。
彼が来てるのも気づいてたけど、集中してるふりをした。
見たことのないチェックのシャツ姿で現れた彼は、とても優しい顔をしていた。
わたしが好きになった優しいひと。正直すぎて冷たいひと。常に正しかったひと。
合わなかった、とそれだけ繰り返し言われた。
気をつかわなくてラクだけど、深い関係にはなれなさそうだと。
わたしは、
短いあいだだったけど付き合ってくれたことはとても嬉しかったし、十分優しくしてくれた。ありがとう。
って、それだけは言えたからよかったはずだったのだ。
だけど、
振り返りもせず去って行く彼を見て、
本当に終わったのだとやっと気づいて、泣いた。
たった半年だったけど、音楽が流れる恋をさせてくれて、ありがとうと。
君との恋は幻のようだった。幸せすぎて。儚すぎて。どうか、次の彼女とは、
あなたの優しさが正しく発揮されますように。
遠く続くこの長い道で
君と僕がすれ違った
幻か 僕は立ち止まって 夜の終わりに
少し道を戻ってそうさ 君の姿見つめていた